弦楽四重奏「ザ・芸者ストリングス」のマネージャとしての奮闘記


by yasuyakko

<   2005年 06月 ( 1 )   > この月の画像一覧

さて、「那須移住計画プロジェクト」の最大の目玉は音楽ホールである。早くから名前は決まっていた。

「弦楽亭」

これど同名で靖奴、実は本を出版している。その内容は、代官山に、靖奴と芸ストが作った弦楽四重奏専用ライブハウスで、芸ストが夜ごと奏でる音楽を耳にして、さまざまな人がちょぴり素敵な人生の宝物を拾う、という架空のエピソード集である。この執筆のときには、すでに弦楽亭の実現を想定していたので、それが少し場所が変わって形態も変わって、この音楽ホールとなったのである。だから名前は当然これ、でもわかりやすいように少し前ふりを入れて、

「那須の木立の中の小さな音楽ホール 弦楽亭」

この着工までに、いろいろ勉強もしたし、こだわりもした。

まず、大きさ、100平方メートルぐらいの床面積がいい。するとぎゅうっと詰めて80名ぐらいの勘定。でもゆったりと音楽を聴いて欲しいから50-60名ぐらいか。カフェスタイルで小さなテーブルも置きたいし。
音響的に、一人あたり何平方メートルという面積割合の基準があって、この計算だとちょうどいいこともわかる。
よし。

形はシューボックス型。すなわち直方体。丸い形とか凝った形の音楽ホールもあるけれど、これだと設計士さんも大工さんも大変だろうし、何よりコストが折り合わない。縦、横、高さは、音響的にいい割合というのがあって、これに準じて、縦12m、横8m。そして高さ(天井高さ)7m。天井は高いほど響きがいいと通説になっているので、天井を普通に作るのは止めて吹き抜けにする。

「だったら、合掌造りにしましょう!」

工務店のK氏、勢い込んで言う。なんでも合掌造りは大工さんがあこがれる素晴らしい日本建築で、ぜひやりたいという。
「うんうん、合掌造り、合掌造り。」
何度も言いながらわくわく顔のK氏。

「いいですね!」
つい、靖奴もだんなはんも笑顔笑顔。

じゃあ素材は何にするとなって、硬い木材がいいと主張した。音の跳ね返りに大きくかかわるからだ。どの種類の木がいいかある程度調べて、K氏に選らんでもらう。唐松なら手に入りそうとのこと。

床と壁は、混じり気なしの唐松のみ、合板などは使わないことにする。そしてその厚さも特注ものの30mm。これだけあれば外に音が漏れることも最小限に留められそう。もちろん音響学的な厚さの基準もあって、これもクリアしている。

そんなこんなを綿密にK氏と打ち合わせる。

「大丈夫ですかねえ。」
K氏が心配顔なのは、靖奴、だんなはんに加え、オーナーとして参画した春奴も、音響には思い切りこだわっていたからである。

「とにかく、響かないのはだめ、響きすぎでいいんですよ。」
と春奴。
「そうそう、後で吸音材を入れるとか、調整できるし。」
と靖奴。

こだわり過ぎて前に進まないと夢は実現しないから、K氏の背中をばんと叩く気持ちで言う。

音響をもっともっとこだわるとすれば、向側にある壁同士が平行なのはよくないのである。音が整然と反射を繰り返してしまうから。
また対称形もよくない。点に音が集中してしまうから。
だから、通常の音楽ホールでは天井に反射板がぶらさがっていて、音がばらついて反射するようにしている。
でも、壁を斜めに作ったり、非対称の構造にしたりするのはかなり大変なので、あきらめて、妥協する。

「天井高いなあ、もうちょっと低くしちゃだめ?」
K氏が言う。コストが随分削減できるという。

「だめ。」
靖奴、このために音響解析をやってみた。本職である。
天井、6mと7mのどちらがいいかを、簡単な形状をコンピュータ内で作って、舞台側で音圧を数値的に設定して、場所によって音の伝わり方にばらつきがあるか(音圧レベル分布という)、高い音と低い音で聞こえ方が変わらないか(周波数伝送特性という)をコンピュータでシミュレーション(数値的に計算)してみた。
なんとなくではあるが、やっぱり7mの方がいいという結論がでる。そして、7mの場合、高音(ヴァイオリンの高い音)がきーんと飛んでいくような傾向も見られた。

「控え室は?」
春奴が演奏者としての視点で尋ねる。

「舞台の反対側に2階のロフトを作りましょう。その下がちょっとした物置スペースとホワイエ(ロビー)、そして洗面所になりますからちょうどいいですよね。」
とK氏。

かなり広い控え室がこうして間取りされ、これも春奴の主張で、2階にも洗面所が付けられることになる。演奏者はここから階段を下りてホワイエからホールに入り客の間を縫って舞台に行く、という形になる。

「いいよね?」
靖奴の念押しに春奴がうなずく。

そして音楽ホールが着工した。

それでも、まだまだ細かいところをこだわる私たち。K氏、本当はとても大変だっただろうに、笑顔を絶やさず、

「わかりました。やりましょう!僕もすごく勉強させてもらっています。」
と常にポジティブ。

こうして、靖奴、だんなはん、春奴、そしてK氏のコンビネーションで、弦楽亭がどんどん素敵になっていった。


(続きはPart5で。)
[PR]
by yasuyakko | 2005-06-01 12:00